マッド・ガッサーの起源
アメリカ、イリノイ州の小さな町マツーンで、突知、謎の毒ガス攻撃事件が集中的に発生した。事件の主役となったのが、頭痛と吐き気、そして体をマヒさせる甘い香りのガスと、事件現場で目撃された黒ずくめの怪人である。
アメリカ、これが未知のガスをまき散らして人々を苦しめた怪人につけられた名前である。
マッド・ガッサーが起こしたと思われる一連の事件は、1944年に始まった。
9月1日午後日時すぎ、マツーンに住むパート・カーニー夫人は、突然、息苦しさで目をさました。
部屋の中に甘い臭いがたちこめていた。急に吐き気に襲われ、下半身が薄れてきた。
夫人は、窓から身を乗りだして助けを求めた。窓を開けたせいか異臭はすぐに消え、ことなきを得た。
仕事を終えて帰宅した夫は、寝室の窓の近くに、やけに背が高く、黒ずくめで頭にツパのないピッタリした帽子をかぶった不気味な人物を目撃。
連続するマッド・ガッサー事件
以後、事件が連続する。9月5日に同じ事件が4件発生。被害に遭ったひとり、ビューラ・オーディス夫人は、玄関の前で、白い布を拾った。
その途端、まるで感電したように体が薄れはじめ、その場で幅吐。数分後、顔全体が火傷を負ったように腫れ上がった。
しかし、約2時間後に、その症状は嘘のようひいてしまった。州の捜査当局でその自い布を分析したが、何も検出されなかったという。
マツーン警察署は但時間のパトロール体制を敷いて、犯人逮捕に全力をあげたが、それをあざ笑うのように、事件は連日発生する。
9月6日に3件発生。ここでも背の高い黒づくめの怪人が、現場から逃げていくのが目撃された。
9月7日には、ある夫人の家に黒ずくめの男が侵入しようとして、未遂に終わったのだ。厳戒体制の中での、実に大胆な犯行である。
続いて、9月8日にも3件発生した。
マッド・ガッサーは、男性のいない世帯か、男性のいないときばかりを狙っていた。
この日、被害を受けたコロンビア小学校のフランシス・スミス校長とその妹も、例外ではなかった。2人は真夜中に襲撃を受けた。
青い霧のようなガスが室内に充満するのを目撃。外で、ブンブンという得体のしれない音を聞いた。
警察は数多くの通報を受けたが、形式的な捜査を行っただけだった。
やがて州警察から大部隊が派遣され、FBIの捜査官もマツlンにやってきたが、さらに事件は続発。
9月9日には6件。マツーン北西部の高級住宅街が襲撃された。
マッド・ガッサー事件の犯人
人々の問で、異常者の仕業だとか新兵器の人体実験説、怪物説など、ありとあらゆる噂話が噛かれたころ、事態は急展開を見せた。
警察は「そんなものは想像の産物でしかない」との声明を発表したのだ。
すると、9月刊日を境にして、マッド・ガッサー事件も衰退しはじめたのである。
これを境に、それまで盛んに事件を煽っていた新聞は、マッド・ガッサーの存在に対して懐疑的な記事を掲載しはじめ、警察までが被害に遭ったと通報してきた人々に対して、手のひらを返すような態度に出たのである。
ガッサーの正体と目される黒ずくめの人物が、多くの人に目撃されているにもかかわらず、その事実をまったく無視。
町や州で大規模な捜査活動が実施されたことも無視。異臭をかいで苦痛に苛まれた被害者の行動は、すべてが幻覚によるものだったとして片づけたのである。
マッド・ガッサー事件の手がかり
メイン州在住の未確認生物研究家、ローレン・コールマン曰く、マッド・ガッサーによる最後の被害は、9月に起きている。寝室の窓を調べたところ、そのすぐ下の地面に靴跡がはっきり残っていたという。
彼がマツーンの調査を始めたときは、すでに当時を知る人がほとんどいなくなっていたそうだ。約2週間にわたって、マツーンの町を騒がせたマッド・ガッサー事件とは、いったい何だったのだろう。
甘い臭いのする未知のガスと、黒ずくめの男が関与していることだけは確かなのだが、記録を通して見ると、事件は、ある一定の期聞をおいては繰り返されている。
1933年から始まって、年と幅はあるものの、人々の記憶から消え去ろうとするころに、必ず原因不明の毒ガス事件が起きるのだ。
これほど長期間出現し続けるマッド・ガッサーには、かなりの執念深さを感じるが、実は特別な意図があった、という噂がある。
つまり、マツーンに住む古老のジョージが、一連の事件は未知の毒ガスを使用した極秘人体実験だったという噂を流したのだ。
それもナチスが開発した毒ガスが試されたのだと。聞いた住人たちが戦傑したことはいうまでもない。ジョージは、軍に所属している弟から聞いた話だといっている。
マッド・ガッサー事件に軍が関連?
事件の背後に軍が関与していたなら、捜査当局に圧力をかけて真実を隠蔽させることなどいともたやすい話だ。
はたして、本当にナチスの毒ガスが使用されたのか、真相は薮の中。わかっているのは、未知の毒ガスをまき散らした黒づくめの怪人マッド・ガッサーの正体が、いまだ不明のままだということである。