潮汐作用が人間の行動や感情に影響している?
殺人など、凶悪犯罪は満月や新月のときに多発する!
満月や新月のとき、交通事故が多発する!
アーノルド・L・リーパーというアメリカの精神科医が、著書「月の魔力」(1984年)で、そう主張し、大変な話題となった。リーパーは、月の引力で、満潮、干潮が起こるように、体内水分が70パーセントの人体もまた、月の引力により潮汐作用が起きている。それが、人間の行動や感情に影響しているとの説をたてた。これを「バイオタイド」理論と呼ぶ。
たしかに、自然界でもカニや、珊瑚、カタツムリなど、満月か新月の日に影響を受ける生物がけつこう存在している。だが、月と地球の距離は約犯万キロメートル。日常生活の中で、月の影響を受けている感覚はまったくない。
しかし、ブラジル、アマゾン河で起こる大逆流。ポロロッカというこの現象は月の力により、巨大な波が現れ、河の水が逆流する。月が、地震や噴火を引き起こすという、驚くべき事実もわかっている。
月の引力
東北大学の大竹政和教授は、「海に満潮干潮があるように、大地も満潮干潮を繰り返している。最大で、初センチにも及ぶ」と指摘する。かつて雲仙普賢岳の火砕流と月の引力との関係に、深い関係が見られたという報告がある。月の引力に比例して、火砕流も大きくなっていることがわかったのだ。
リーパーのデータを偶然だとする否定的な意見もあるが、否定の根拠になっているデータもまたl例しかなく、それもまた偶然かもしれない。
「バイオタイド」理論では、まず月の影響を受けることはないが、人によっては満月、新月の時、月の引力による「生物学的潮汐」の影響をうけて、行動の変化、情緒が不安定になるなどの現象を引き起こすといっているだけだ。だから、月に魔力がある、というのは、迷信かもしれない。
だが日本でも、「新月・満月の時、死亡事故が圧倒的に多い。原因はスピードの出しすぎと無理な追い越し」という、現職警官の統計報告がいくつか提出されている。以前、取材で知り合ったダンプカー運転手が、筆者にこういっていたことが思い出される。危険な日っていうのがあるんです。特に満月の日。夜空に大きく月が顔をだしてるのを見ちゃうと、なんか血が騒いで、ついついアクセルをめいっぱい踏み込んじゃうんです」
でも、彼はそれを熟知していて、これまで無事故無違反だという。危険な日といえば、社団法人「兵庫県自家用自動車協会連合会」では、「交通事故危険日」と題して、『満月と魔力の謎」(二見書房)の著者、黒木月光氏の研究から交通事故の危険日を毎月予測しているという。
月の奇妙なチカラ
古来より、月には不思議な力があるとされてきた。西洋では、月を見すぎると気が変になるといわれている。ルナシーとは、月の力が一時的に精神錯乱状態をもたらすとされる病。また赤い満月は、不吉の前兆だともいわれてきた。昔から、満月の夜に出産が多い(実際には、その1週間前から兆候が起きるという)とか、逆に新月の夜には亡くなる人が多いともいわれてきた。実際、月の力は微々たるものだとはいえ、地球は月の引力によって地軸が安定し、人をはじめ、生命が育まれた環境をつくったという事実がある。
だから、人聞は間接的にしろ月の影響を受けているのはまちがいない。だが、人の精神をくるわせる力i月の魔力1については目に見えないし、たとえあったとしても、われわれにとっては、まだ未知でしかないのだ。