通り魔事件は都市伝説を生み出す要素のひとつになっている。
このハサミ男も通り魔事件がきっかけで生まれたモンスターである。
恐怖のハサミ男の起源
1997年叩月、福岡県で女子中学生を狙った連続通り魔事件が起きた。そして同じ年、ハサミをもった不審な男の目撃が岡県で多発。これを受けて新聞は、「通学路にまたハサミ男」という見出しで事件を報道。
マスコミが、初めてハサミ男の存在を問題にしたのは、この頃だった。
ハサミ男の名が全国的に広まったのは、起こった「八王子児童襲撃事件」がきっかけ。
だが2004年1月に朝の公園に出没したハサミ男は、中学生の腹を蹴って逃走。
その日の夕方には女子小学生の前に立ちはだかり、無言で追いかけ回している。
通報を受けた地元警察ではパトロールを強化。不審男の行方を追った。
そんな中、公園での事件は、ハサミ男の噂を利用した狂言だと判明。
だが、夕方の事件との関連性は薄く、ハサミ男の逮捕につながる情報は得られなかった。
そしてその一方で、「ハサミ男」が恐怖のモンスターとして子供たちの聞で妄想され、夜道を俳個しはじめたのである。
シャキーン、シャキーン、シャキーン・・・。暗い露地裏で奇妙な金属音が聞こえてくる。街灯の灯りの中、露地の角から伸びるナゾの黒い影。
「シャキ、シャキ、シャキ」
それは、影が手にしているハサミの音だった。恐怖で逃げだす子供。
「シャキ、シャキ、シャキーン」
身を切られるようなハサミの音が背後から忍び寄ってくる。
捕まったら殺される日子供はうしろもふりかえらずに、家に逃げ帰る。
こんな話が、各地でまことしやかに流布されたのだ。
恐怖のハサミ男の正体
「捕まったら、体を切り刻まれる」「巨大なハサミで手足をちょん切られる」「体を真っ二つにされる」「股から半分に切り裂かれる」噂が、やがてが実際に起きたことに変わり、ハサミ男の恐怖は、あっというまにエスカレートしていった。
ハサミ男は、殊能将之の小説「ハサミ男」(1999年刊、豊川悦司主演で2004年に映画化)の影響もあるかもしれない。またゲーム「クロックタワー」シリーズには、巨大なハサミをもった「ハサミ男」が現れるし、ティム・パートンの映画「シザーハンズ」では、心やさしいハサミ男が最後には殺人を犯してしまう。
こういったものから、ハサミ殺人鬼という図式が、子供たちの中に刷り込まれたのではないだろうか。
つまり、「ハサミ男」は、八王子で起きた子供を狙ったハサミを凶器にした通り魔事件が実際にあったこと。それとゲームや小説、映画などのイメージがミックスして生まれた、都市伝説界の異色キャラクターである。