いっとき、「サブリミナル」とか「サブリミナル効果」といった活字が、マスメディアの聞を走り抜けたことがあった。
サブリミナル効果を学問的に、かいつまんでいうと、「潜在意識、意識と潜在意識の境界領域に刺激を与える事で表れるとされる効果」なのだという。字面をみてもよくわからない。わからないだけに、謎が多く、科学的にはまだ証明されてないし、その効果自体が学者のなかでも疑問視されている分野であるが、悪影響があるとテレビ放送などでは、とっくに使用禁止らしい。
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サブリミナル効果とは
そのサブリミナル効果とは、通常では感知し得ないほど短い映像を繰り返し流して、視聴者の潜在意識に訴えかけるという手法で、視聴者は自覚がないうちにその映像が潜在意識に残るとされている。それを実証しようという研究は、回世紀半ばから始まっている。
当初は知覚心理学だけの領域であったが、現在は広告研究、感情研究、社会心理学、臨床心理学などの分野で研究されている。
サブリミナル効果の有名な実例
有名な話だが、1957年、マーケティング業のジェームズ・ヴィカリが、ニュージャージー州フォートリーの映画館で上映された映画『ピクニック」のフィルムに、「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」というメッセージが写ったコマを5分ごとに繰り返し挿入し、売上に影響があるかを測定した実験がある。
現実にはフィルムのlコマを人聞が認識する事は不可能。だが、この映画を上映したところ、コーラとポップコーンの売上が増大したと噂された。が、現実はちがった。1962年、ヴィカリ自ら、「マスコミに情報が漏れ過ぎた。実験には十分なデータが集まっていなかった」と、実験結果の懐疑性を告白。数年後、今度はオレンジジュースのメッセージを入れて同じ実験をしたところ、やはりコーラの売り上げが最も多かった。原因は、たんにアメリカ人は映画を見る時に、コーラやポップコーンを口にするのが好きなだけだったのだ。
サブリミナルにより引き起こされたとされる事件
サブリミナルは、一種のマインドコントロールだ。
視覚からの情報を認識することで成立するというメカニズムだが、音楽でも、サブリミナル効果によるという事件が起きている。
1986年、ヘヴィーメタルバンド、ジューダス・。フリーストの曲を聴いていた少年2人が銃で自殺を図った事件や、オジー・オズボーンの曲にサブリミナル効果があるとしていずれも裁判沙汰になったが、アーチスト側が勝訴している。
サブリミナルは関係なかったのだ。
サブリミナル効果は意外なところに潜む
また1970年代には、オタワ大学教授のウィルソン・ブライアン・キイがその著書「潜在意識の誘惑」(1974年)等の中で、我々が普段目にしている広告の中には、タブーとされる言葉や、性器や性行為、死などをイメージする画像が巧みに隠されており、それらが我々消費者の潜在意識下の欲求へと働きかけ、消費行動を支配しているという独自の持論を展開している。
しかし、キイの強引とも思える画像に対する解釈は、少々やり過ぎといわざるをえない気がするし、逆にそんな解釈をしている側が欲求不満なのでは、とでもいうツッコミがはいりそうだ。
サブリミナル効果を与える時聞は約0・03秒
ちなみに、外界から入力された視覚的情報が、大脳皮質の視覚野で知覚されるまでにかかる時間は約0・1秒。それより短いと認識できない。サブリミナル効果を与える時聞は約0・03秒。これでは、大脳皮質視覚野が感知できないのだ。
最近の研究でも、一瞬だけ画像が映っていても、知覚が認識していない。つまり、見て気づかないものが潜在意識に届くわけはないという考えが主流で、サブリミナルという手法は心理学的には有効と認められていないのだ。サブリミナル効果を認識することは、原理上不可能だと考えられているわけだ。では、サブリミナル効果は、たんなる都市伝説なのだろうか。いや実は、そうともいいきれない。
結局サブリミナル効果は存在するの?
実験のやり方によって、視覚野に到達する伝導路よりも素早く伝わる他の知覚野の存在が示唆されている。もし、これが証明されれば、サブリミナル効果は存在することになるそうである。
サブリミナル効果をもたらすというグッズが、日本でも大きなマーケットを占めている。
「サブリミナル効果」を語い、聞くだけで小食になりダイエットができるというCDや、見るだけで学習意欲が向上し成績が上がるというビデオ、といった商品も広く販売されている。
コンビニやスーパーマーケットでは、サブリミナルメッセージを込めた音楽を庖内に流し、万引きを抑止しようという取り組みもある。反面、これが悪用されることで、消費者に不当に購買意欲を抱かせたり、なんらかの政治的傾向を植えつけるのではないか、と危倶する声もあがっているという。