「ねえアガスティアの葉って、知ってる?」
「あの個人の運命が予言されてるってやつだろ」
「そう、占いの一種なんだけど、どう思う」
「当たるも八卦、当らぬも八卦。自分は、占いはあまり信じないほうだけどね」
「インドまで行くのたいへんだから、代行サービスに頼んだのよ。でも、もう3か月になるのに、ナシのつぶてなの。ナキミさん、あれってどうなのかしら?これからのこと知りたくって、頼んだんだけど」
アガスティアの葉の起源
アガスティアの葉は女性にかなりの人気がある。アガステイアは、紀元前3、000年ごろインドに実在していたとされる伝説上の人物。そのアガスティアは、鹿の皮に古代タミール語で書かれた予言を書き残したという。この予言は、弟子によって「パルメーラ」(榔子の一種)の葉に書き写されて、それが今も残されているのだという。
その予言というのは、この世に存在する人々すべての個人情報が予言されている、といわれている。だとすれば、世界中の人口すべての予言があるわけで、超膨大な数の葉っぱがインドにあることにある。だれが聞いたって、にわかには信じがたい話だ。
世界の人口分の葉っぱの数
「世界の人口分の葉っぱの数って、考えたことある?。ざっと白億だよ。ふつうに考えたって、ありえない数だろ、そんな」
「たしかに。でも、南インドの数ヶ所に、アガスティアの葉を管理している館があるっていうのよ」
「そうだってね。君も知ってるライターのZIN君がインド好きで、話のネタにってそこに行って占ってもらったそうだよ。彼がいうには、古代タミール語というのは、常人では読めない。しかも個人の指紋によって識別してあるとかで、指紋を押した後、葉を読むことができるナディ・リーダーという解説者の協力によって葉を探すんだって。でも、なぜか、事前調査があるんだよ」
「わたしも、書かかされて業者に送ったわ」
「ZINの話では、ナディ・リーダーが、名前はもちろん、生年月日、職業、家族関係など別にもおよぶ質問をしたそうだ。事前に、かなりの量の個人情報がインプットされてしまうよね。この情報を基に、たとえば占星術などをからませれば、それなりの運命を導きだすことができるだろ」
「そうね・・・・・・」
「ZINは不時にも、思いつきで架空の名前を書いたんだって。そしたら、ちゃんと答えが返ってきたので、思わず笑いを培えたってさ」
「それってほんとなの」
顔から笑いが消え、うっすらと涙目になってきた。彼女は、代行業者にかなりの金額を支払ったにちがいない。
ちなみに
運命を知るには、解説のための検索料金プラス翻訳料、通訳料など含めると、かなりの高額料金を支払わされる。そのわりには、葉に書かれた運命は、ごく一般的な事柄、だといわれている。
えーっ、世はスピリチュアル・ブームだ。オーラが云々、過去世が云々、魂の離脱で云々それなりのもっともらしい、そしてごく常識的な当たり前の御託宣を聞きいて、心が癒され、満足する人たちが急増している。
同様に、そういう意味ではアガスティアの葉にも、それなりの癒し効果があるのかもしれない。